デュワーズの“心臓部”として生まれたシングルモルト
スコットランド・南ハイランド地方に位置するアバフェルディ蒸溜所は、ブレンデッドウイスキー「デュワーズ」の中核モルトを生み出すために、1898年にジョン・デュワー・アンド・サンズ社が建設した蒸溜所です。
この蒸溜所は、同社が設立した唯一の蒸溜所であり、120年以上にわたり、世界中のファンに愛されるデュワーズブレンドの“魂”を支え続けています。
そして、そのブレンド用原酒としてだけでなく、シングルモルトとしても高く評価されているのが、この「アバフェルディ 12年」です。
熟成によって開花した、南ハイランド・スタイルの真骨頂
「アバフェルディ 12年」は、2000年代にバカルディ社傘下となった後にリリースされたボトル。ソフトでマイルド、滑らかで優しい口当たりは、南ハイランドスタイルの王道とも言える魅力を放ちます。
第一印象は、ヘザーハニーのような甘く柔らかなアロマ。そこからフルボディの滑らかさが広がり、後半にはわずかにオレンジピールのビター感、そしてスパイスがエレガントに重なります。デザートと一緒にゆったりと楽しむのにも適した、優雅で落ち着いたシングルモルトです。
テイスティングノート
香り:ヘザーハニー、熟した果実、オレンジの皮、ほのかなスパイス
味わい:柔らかくバニラと蜂蜜を思わせる甘さ、フルーティーで丸みのあるテクスチャー
余韻:ドライでエレガント、わずかにスパイシーな余韻が心地よく長く続く
「水の神のプール」が育むピュアなモルト
「アバフェルディ」という地名は、古代ケルトのゲール語で“水の神のプール”を意味します。蒸溜所の仕込み水には、透明度が高く、水量豊富なピティリー川の水が使われており、その純粋さがアバフェルディの柔らかな風味を形作っています。
この水こそが、アバフェルディが生み出すモルトウイスキーの品質と個性の礎となっており、「水の神からの祝福」とさえ言われるほどです。
日本で話題を呼んだ“山崎に似た味わい”という評判
一時期、アバフェルディ 12年は「日本を代表するシングルモルト・山崎に似ている」との噂がSNSやウイスキーフォーラムで話題となりました。
実際のところは飲む人の感じ方に委ねられるものの、この噂がきっかけで日本国内での人気が急上昇。比較的手に入りやすかった価格帯のシングルモルトとしては異例の注目を浴び、一時期はオンラインショップでも完売が続出するほどの盛況ぶりを見せました。
“静かなる実力派”として再評価される一杯
アバフェルディは、デュワーズの中核として長らく表舞台には出てこなかった存在ですが、その実力は折り紙付き。優美で繊細な12年熟成の味わいは、華美ではないからこそ、日常の中にしっくりと寄り添います。
派手さや強烈な個性を求めるウイスキーとは対極にある、“静かな感動”をくれる一本。落ち着いた時間のなかで、心を穏やかに満たしてくれるモルトです。
南ハイランドの穏やかな気候、清らかな水、そして100年以上にわたる歴史が育んだ、アバフェルディ 12年。
そのやさしくまろやかな風味は、ウイスキー初心者からベテランまで、誰にとっても“心の常備酒”になることでしょう🥃✨