華やかさと潮の香りが響き合う、唯一無二のキャンベルタウンモルト
スコッチウイスキーの中でも「幻の産地」として語られることが多いキャンベルタウン。その静かな港町に2004年、約80年ぶりに新たに誕生した蒸溜所「ミッチェルズ・グレンガイル蒸溜所」が、初めて世に送り出した16年熟成モルト、それがこのキルケラン16年です。
創業年の原酒のみを使用
長き熟成を経て生まれた真のファーストエディション
このボトルに詰められているのは、2004年に蒸溜された原酒のみ。つまり、蒸溜所創業年に造られた貴重なファーストバッチ原酒が16年の時を経てついに姿を現した、まさに“グレンガイル蒸溜所の原点を味わえる”記念碑的な1本です。
原酒構成はバーボン樽熟成をメインに、マルサラワイン樽を少量加えたバランス設計。フルーティーでリッチなニュアンスと、スパイス感が見事に調和しています。
香り・味わい:複雑で官能的なキャンベルタウンスタイル
グラスに鼻を近づけると、まず感じるのはオレンジピール、レモンメレンゲパイ、ナッツ、パイナップルといった甘やかで華やかな香り。そこに、蜜蝋やワクシーさ、そしてキャンベルタウンらしい潮のニュアンスが加わり、非常に複雑で印象的なアロマが広がります。
口に含むと、バニラやリコリス、ソフトなピートスモーク、そしてブラックペッパーのスパイシーさが舌を包み込みます。フィニッシュに向かって現れるのは、海水のような塩気とサンダルウッドを纏ったスモーク。一口ごとに、16年の熟成が生み出した幾重ものフレーバーが現れては消えていく、まさに熟成モルトの醍醐味です。
“キルケラン”という名前の理由
グレンガイルの誇りと、その背景にある物語
実はこのシングルモルト、蒸溜所名の「グレンガイル」ではなく、「キルケラン」というブランド名で販売されています。
これは、同じキャンベルタウンにある「グレンスコシア蒸溜所」が「グレンガイル」の商標を保有していたため。そこでグレンガイル蒸溜所は、地元キャンベルタウンの古名“キルケラン”を採用し、自らの製品にその名を冠しました。
それは、この土地の歴史やスピリットを継承する証でもあります。
スプリングバンクとの共通点、そして違い
グレンガイル蒸溜所では、スプリングバンクと同じ製麦設備、同じ仕込み水、同じ麦芽(スプリングバンク製)を使用しています。
しかし、スプリングバンクが「2回半蒸留」という独特のスタイルを採用しているのに対し、グレンガイルはオーソドックスな2回蒸留。この違いにより、同じ原料ながらもキルケランはよりクリーンでシャープな味わいに仕上がっています。
終わりに:キャンベルタウン復興の象徴となる1本
「キルケラン16年」は、単なる長期熟成のウイスキーではありません。
それは、キャンベルタウンという歴史ある産地が再び息を吹き返し、新しい時代を築くための旗印ともいえる存在です。
クラフト感溢れる味わいと、蒸溜所の物語が詰まったこの1本は、ウイスキー好きならぜひ一度味わっていただきたい、時代の節目を告げる特別なシングルモルトです。